「NFC」は「Near Field Communication」の頭文字を取った略語になります。「近接無線通信技術」の規格の一つで、現在は交通系ICカードやマイナンバーカード、クレジットカードにも採用されています。
ここではNFCに関して説明します。
NFCとは?
NFCは、13.56MHzの周波数帯を用いて10cm以下の距離を通信する、近距離の無線通信技術です。
NFCの機能が搭載された機器どうし、あるいはNFCの機能が搭載された機器とNFCタグ・カードとの通信が可能です。
この技術は2004年に「NFC FORUM」という業界標準団体が発足し、仕様・規格を策定しました。
以前はまだNFCに対応した製品やサービスは少なかったですが、現在ではスマートフォンに標準で「NFC機能」が搭載されています。これによりNFC技術を利用した商品・サービスが様々な市場で普及しています。
最新の調査会社の市場調査レポートによると、NFCの世界市場規模は、2022年に224億米ドルに達し、今後2023年から2028年の間に約7%の成長率(CAGR)で、2028年までに366億米ドルに達すると予測しています。
更に、2020年以降のコロナ禍で、人々が接触することによる感染を恐れたため、非接触でのコミュニケーション・サービスが普及したのではないかと推測しています。
NFC技術の活用事例
我々の身近なところで既に活用されている、NFCを利用しているものを下記に示しました。
きっとどれか1つは皆様が日常的に利用していたり、知っているものがあると思います。
- マイナンバーカード
- IC運転免許証
- 税理士カード
- 交通系ICカード
- 非接触通信対応クレジットカード
- ビルセキュリティーカード
- スマートロック
- スマートフォンによる電子決済・電子マネー決済
- 工場での商品管理・在庫管理システム
- ゲーム用の周辺機器、アイテム管理(Amiiboなど)
- スマートスピーカの定型アクション(Amazon SwitchBotなど)
NFCは、今の便利な生活を支える、重要な技術の一つと言えます。NFC機能が搭載されたスマートフォンが普及してきたことで新たなサービスが増えることが期待できます。
NFCタグの構造・原理
NFCタグは、小さなICチップとアンテナから構成されています。
ICチップには、情報(データ)を保存するためのメモリ部分と、情報を読み書きするための回路が搭載されています。
アンテナは、スマホから出る電磁波を受信すると電力を発生し、ICチップに電力を供給します。そして、電力供給されたICチップは動作を開始し、メモリに保存された情報をアンテナを介してスマホに送信します。
アンテナは通信と電力供給の2つの機能を実現しています。これによりNFCタグはバッテリがなくても通信相手から電力供給してもらうことで機能するという特徴があります。
これによりNFCタグは、電子機器以外の商品・製品に対して、簡単に、新たな付加価値を提供することができます。
NFCタグの機能
NFCタグは、基本的には自由に情報(データ)を読み書きできます。
一方で、簡単に読んで欲しくない・書き換えして欲しくない情報に対して、セキュリティ機能が利用できます。
NFCタグにはセキュリティ機能の一つとして、情報(データ)を守るために、上書きを禁止する機能や、書き込み・読み出しの際にパスワードを要求する機能を実装しているものもあります。
使用用途によって、これらの機能を組み合わせて便利・かつ安全なシステム・サービスを実現しています。
NFCタグの種類
NFCタグは、下記のようなタイプがあります。
- シール型
- コイン型
- カード型
シール型は名前の通り、片面が粘着面となっており、紙やプラスチックなどに直接貼り付けることができます。
鉄やアルミなど、金属面に貼ってしまうと、通信に影響が出てしまうのでやめましょう。
また、NFCタグもICの一種なので、水分・湿気を嫌います。劣化の原因となりますので乾いた場所で使用することを強くおすすめします。
コイン型・カード型は、あらかじめプラスチック(PVC)の筐体の中にNFCタグが入っているタイプになります。
密閉されているので、シール型に比べて水分・湿気に強いです。屋外で使用するもの、持ち運ぶものやキッチン周りなどで利用するものには、これらのタイプが最適です。
シール型は主に22mm~25mmサイズのものが主流で、100円玉、500円玉くらいのサイズ感になります。
コイン型も同様に25mmサイズのものが主流で、500円玉くらいのサイズ感になります。厚さはクレジットカードと同じ0.76mmサイズのものが多いです。
カード型は一般的なクレジットカードのサイズの規格にあわせて、縦53.98mm、横85.60mm、厚さ0.76mmとなっているものがほとんとです。シール型・コイン型に比べてサイズは大きいですが、アンテナのサイズが大きいので他のタイプに比べ通信反応が良く、且つ距離が若干離れていても通信することができます。
サイズ | 形態 | その他 | |
シール型 | 100円~500円玉サイズ (直径 約22~25mm) | 片面がシール | 水分・湿度に弱い |
コイン型 | 500円玉サイズ (直径 約25mm、厚さ0.76mm) | 筐体に入っている | 水分・湿度に強い |
カード型 | カードサイズ (縦53.98mm、横85.60mm、厚さ0.76mm) | 筐体に入っている | 水分・湿度に強い、 上記と比べ通信反応が良い |
いずれのタイプも、インターネット経由で安価に購入することが可能です。ご興味がある方はいくつか購入して、お持ちのスマホでのNFC通信をお試しください。
NFCタグのメリット・デメリット
NFCタグには、多くのメリットがあります。
- 非常に簡単に、素早くデータ受信ができる
- 小型で、いろいろなもの・場所に設置することができる
- 外観に依存しないので、デザインとの相性が良い
- セキュリティ機能が実装しやすい
一方で、NFCタグのデメリットは下記が挙げられます。
- 非常に短い距離での通信しかできない
- NFCに対応した機器でないと利用できない(古いスマホにはNFC機能がない)
- ICなので、設置環境によっては寿命が短くなる
NFCの機能はQRコードの機能と比較されることがありますが、QRコードは主に紙媒体との相性がよく、カメラがついているスマートフォンであればその機能を利用することが可能です。
導入コストの面ではQRコードの方が良い印象がありますが、アクセスのスピード・スマホでの操作性を考慮するとNFCタグの方がトータルメリットが大きいです。
従来QRコードで普及しているサービスが、NFCタグと併用して提供されるケースも増えてくると推測しています。
両方の特徴を活かしながら、利用者がより便利になるような環境が増えていくことを期待しています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
私自身、NFCタグの市場拡大を期待しながら、NFC関連情報に注目していきます。